地球惑星科学専攻(地質学鉱物学教室)・教授 野口 高明
私事ですが,子供の時によく読んでいた本を実家から持ち帰ることが最近ありました。子供なら大抵持っていそうな小学生向けの宇宙の本と共に,アポロ11号が月に降りたときのことが書かれた小学生向けの本が何冊も出てきて,自分が月に人が降り立ったことにいかに強く興味を持ったかを改めて思い出しました。
2019年はそのアポロ11号が月に降りてから50年という節目の年でした。アポロが月から取ってきた岩石の分析結果を報告するために始まったLunar and Planetary Science Conference (LPSC)でも特別にアポロの記録映画が上映されたりしました。その記念の大会の会場にいることになるとは,小学生の自分には全く想像も付かなかったとしか言いようがありません。ちょうど,はやぶさ2探査機が持ち帰る試料の国際分析チ―ム内の班のひとつの班長に選ばれたところだったので,自分の発表もそこそこに,この人には私の班で一緒に研究してもらいたいと思っていた人に声をかけてまわりました。皆,班員になってくれることを快諾して下さり,ありがたく思いました。
縁あって2021年3月より,京都大学理学部で教鞭をとることになり,私の班の班員になって下さっていた理学部教員の方々を核にした国際チームとして,はやぶさ2試料の分析を行うことができました。はやぶさ初号機の試料分析は全てのメンバーでも数十人程度のささやかなチームだったのとは異なり,今回は私の班だけでも50人を超える国際チームでした。無事,一年間の研究を遂行できたのは全班員の協力の賜だったと改めて感謝しています。
現在,他の班の成果が論文として少しずつ公表されていることは皆さんもご存じでしょう。私たちの班の研究は,それらとは違った視点からの研究で,ある意味,ちょっと京大らしい研究ではないかと勝手に思っています。はやぶさ初号機やはやぶさ2に強い興味を持って,それこそ第100回のLPSCに自分がいることになるとは思ってもみなかったということになる子供が日本のどこかにいるのではないかと夢想している今日この頃です。